【2013/8/23WSJ】米、中国にらみアジアのミサイル防衛強化 日本にもレーダー

http://jp.wsj.com/layout/set/article/Japan/node_499213

ウォール・ストリート・ジャーナル日本

 

 米国はアジアでのミサイル防衛体制を大幅に拡大する計画だ。同国の複数の当局者によれば、目的は北朝鮮の脅威を抑えることにあるが、中国の軍事力に対抗するために使う可能性もあるという。

 計画は、アジア広域をカバーする防衛体制の一角をなす。ミサイル防衛艦や地上配備の迎撃機に関連したレーダーを日本南部に新設するほか、東南アジアにも設置する可能性がある。

 今回の計画はオバマ政権の新たな防衛戦略の一環。同政権はイラクやアフガニスタンとの10年に及ぶ戦争後、米経済にとって重要なアジア太平洋地域に資源をシフトしている。

 北朝鮮のミサイルの脅威に対する警戒心が米国とアジア太平洋地域の米国の同盟国の間で強まっている。また、原油など海底資源が豊富な南シナ海などでは領有権をめぐり中国が示している強硬姿勢についても、米国とその同盟国では懸念が一層拡大している。

 米国の防衛政策立案者は、特に中国の対艦弾道ミサイル開発について懸念している。アジア地域で米国の軍事力を維持するのに重要な米海軍の空母にとって脅威であるからだ。

 米議会調査局のミサイル防衛に関する専門家、スティーブン・ヒルドレス氏は「われわれのレトリックの焦点は北朝鮮だ」と指摘。「現実問題として、われわれはもっと長期的な視点から部屋のなかのゾウを見ている。つまり中国だ」という。

 新しいミサイル防衛の中核となるのは、「Xバンド」と呼ばれる地上配備型の早期警戒レーダーを日本南部の島に設置することだ、と国防総省関係者は話す。島の名前は明らかになっていない。国防総省はこの件について日本と現在協議中だ。日本が合意すればレーダーシステムは数カ月以内に配備されることになり、2006年に米国が青森県に配備したXバンドレーダーを補完することになるという。

 日本の防衛省の広報担当者は、政府としてはコメントしないとしている。日米両国は新レーダーシステムを、米軍の駐留に対して長い間怒りを抱いている沖縄県に配備することはしなかった。

 米太平洋軍と国防総省のミサイル防衛局関係者は北朝鮮および一部中国から発射される弾道ミサイルをより正確にとらえるため、3つ目のXバンドレーダーを配備する場所について東南アジアで検討中だ。

 一部の国防総省関係者はフィリピンを3つ目のXバンドレーダー配備候補地として焦点を絞っている。Xバンドレーダーは米軍需製品メーカー、レイセオンが製造したものだ。国防総省関係者は、協議はまだ初期の段階にあり、3つ目のXバンドレーダー配備地はまだ決まっていないとしている。

 米国のプレゼンスを強化することは、過去に米国の弾道ミサイルについて対米批判の先鋒となってきた中国との間で緊張を高めることになる。対イラン用に中東と欧州に配備されているレーダーシステムと同様のこのシステムを中国は恐れている。中国の戦略的抑止力を弱める可能性があるからだ。中国は2006年に日本にXバンドレーダーが配備された際に反対した。ソ連も欧州と中東に先のレーダーシステムが配備された際に同様の懸念を表明した。

 国防総省のリトル報道官は具体的な計画についてはコメントせず、「北朝鮮は差し迫った脅威であり、われわれのミサイル防衛の意志を決定づけた」と述べた。

 今年4月、北朝鮮は多段式ロケットを発射したが、発射2分未満に爆発した。これまでにも1998年8月、2006年7月、2009年4月に北朝鮮はロケットを発射している。

 国防総省は4月の北朝鮮ロケット発射をモニターするため、通常ハワイのパールハーバーに設置している海上用Xバンドレーダーを太平洋に移動させた。

 国防総省は台湾海峡全域で拡大する軍事力の不均衡を特に懸念している。中国はこれまで、東南アジア地域に展開する米海軍もターゲットになり得る、性能を上げた弾道ミサイルや艦船攻撃用弾道ミサイルの開発をしてきた。

 国防総省の中国軍に関する最新の年次報告書によると、中国には台湾をターゲットにした1000~1200の短距離弾道ミサイルがあり、長距離巡航ミサイルや弾道ミサイルも開発してきた。そのなかには、930マイル(約1500キロ)以上離れた航行中の艦船を攻撃するために作られたものも含まれる。

 複数の現職および元当局者によると、新しく配備されるXバンドレーダーは北朝鮮全域だけでなく、中国の一部地域もカバーする。

 ある米高官は「北朝鮮と中国を阻止するか、どちらも阻止しないかだ」と話した。

 一方、中国政府は、自国が近隣諸国に何の脅威も与えていないとしてきた。22日には同政府当局者に連絡が取れなかった。ワシントンの中国大使館はコメント要請に応じていない。

 国防総省の目標の1つに、微妙なかじ取りを迫られているアジアの同盟国を安心させることがある。多くは米国を後ろ盾にしたいものの中国を触発することは避けたい意向であり、財政面で制約のある米政府が中国政府の急速な軍近代化に対抗できるとは確信できずにいる。

 パネッタ国防長官は22日、ワシントン州に空母ジョン・C・ステニスを訪れた際、米国が「太平洋に焦点を置き、部隊を投じる」と述べた。

 アジアにおける米国の拠点、特に沖縄の海兵隊施設は、絶え間ない緊張の元になっており、強化されれば同様の問題を引き起こしかねない。日本については、南部にXバンドレーダー基地を新設するほか、グアム移転を控えた沖縄海兵隊の人数を短期的に増やす計画だ。アフガンの海兵隊員が2万1000人から7000人弱に減るなか、沖縄の海兵隊員は約1万5000人から1万9000人に増える見通しだと当局者らは語る。

 アナリストらは、米国のミサイル防衛システムが中国に対してどれほどの効果を持つのかは不明だと語る。弾道ミサイルに関する2010年の米国防総省のリポートは、同システムがロシアや中国の大規模ミサイル攻撃に対応できず、こうした国との戦略バランスに影響を及ぼす意図はないとしている。

 前出の米高官は、新たなミサイル防衛システムについて、少なくとも中国からの限定的な攻撃をとらえ、撃退することができるとの見方を示した。

 モントレー国際研究所(カリフォルニア州)のジェフリー・ルイス氏によれば、アジア戦域でのミサイル防衛システム配備は中国への警鐘になりそうだ。中国が、システムは台湾もカバーすると考えればなおさらだという。ルイス氏は「日本の南部に1基、フィリピンに1基置けば、台湾を囲むようなものだ」と述べた。「そのため、台湾人にミサイル防衛の帽子をかぶせることができると確かめているように映る」という。

 米議会調査局のヒルドレス氏は、米国が日本、韓国、オーストラリアを中心とした地域の力と米弾道防衛システムを組み合わせた、全域的なミサイル防衛システムの「基礎を築きつつある」との考えを示した。

 米当局者によれば、こうした同盟国の一部は、今に至るまでリアルタイムの情報の共有に抵抗し、米国の試みを複雑にしているという。韓国と日本の領土問題がここ数週に再燃していることから、向かってくるミサイルの撃退に向けた、統一された指揮統制システムを創設する難しさが浮き彫りになっている。

 米国はペルシャ湾での総合ミサイル防衛システム構築でも同様の問題に直面している。

 Xバンドがミサイルの軌道を特定すれば、米国は艦上ないし地上のミサイル迎撃機やミサイル迎撃システムを配備できる。

 海軍当局者や議会調査局によると、海軍は、弾道ミサイル防衛能力のある戦艦を現在の26隻から18年までに36隻に増やす計画。当局者らは、そのうち60%までもがアジア太平洋地域に配備される公算が大きいと述べた。

 また、国防総省の高官によると、陸軍は高高度広域防衛システム(THAAD、サード)の追加配備を検討中。現在の計画では、陸軍は同システムを6つ構築中だ。

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